前職を退職し、現在失業保険の受給を考えている、あるいはすでに受給中の方で、生活費を補うために少しでも働きたいと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。失業保険を受給しながら働くことは可能ですが、そのためには労働時間や収入、雇用契約について、厳格なルールを守る必要があります。
この記事では、失業保険受給中に安心して働くための具体的なルールと注意点を網羅的に詳しく解説します。情報を正しく理解することで、賢く制度を活用しながらご自身のペースで再就職に向けた準備を進めることができるでしょう。
失業保険を受給しながら働くための基本ルール
失業保険を受給しながら働くには、守るべき明確なルールが3つあります。具体的には、「労働時間」、「雇用契約期間」、そして「収入」に関する制限です。
これらの基本ルールを正しく理解し、遵守することが、失業保険の不正受給などのトラブルを避け、制度を賢く活用するための最初のステップとなります。この後のセクションでそれぞれのルールについて詳しく解説しますので、ご自身の状況と照らし合わせながら確認してください。
➀失業保険受給中の労働時間の制限
失業保険をもらいながら働くための基本ルールのうち、特に大切なのが「労働時間」に関する制限です。ハローワークが失業状態か就職状態かを判断する上で、週の労働時間は重要な基準になります。
週20時間以内の労働が条件
失業保険の受給資格を維持しながら働く場合、「週の労働時間を20時間未満に抑える」必要があります。ハローワークが「安定した職業に就いた」と判断する基準で、もし週20時間以上働いてしまうと、その仕事が雇用保険の適用対象となり「就職した」とみなされて失業保険の給付が停止されてしまいます。
このルールは、単発のアルバイトや短期の派遣であっても適用されます。複数の仕事を掛け持ちする場合も、それらの合計労働時間が週20時間未満になるように注意が必要です。
1日の労働時間を4時間未満に抑えるメリット
失業保険をもらいながら働く際、1日の労働時間を4時間未満に抑えることには大きなメリットがあります。1日4時間未満の労働であれば、失業認定日に「就労」として扱われても、その日の失業手当が減額されるだけで済み、給付が「先送り」になることは基本的にありません。
給付日数が減らないため、失業保険の総受給期間を圧迫することなく収入を得ることができます。失業期間中の安定したキャッシュフローを維持しやすくなり、精神的な負担も軽減されるでしょう。例えば、基本手当とアルバイト収入の合計が前職の日給の8割を超えない範囲であれば、減額されたとしても、もらえるはずだった基本手当の日数はしっかりと確保されます。
労働時間が4時間以上の場合の影響
もし1日の労働時間が4時間以上になった場合、その日の失業保険の基本手当は原則として支給されず、「先送り(不支給)」となります。その日については失業状態ではないと判断されるためです。
先送りになった給付は、所定給付日数の範囲内であれば後日受け取ることができるので、もらえる基本手当の総額が減るわけではありませんが、給付日が後ろにずれるため短期的な資金計画に影響が出る可能性があります。
さらに注意が必要なのは、この「先送り」が何度も重なる場合です。失業保険には受給期間という期限があり、原則として離職した日の翌日から1年間と定められています。もし先送りが続き、この受給期間を過ぎてしまうと、まだ残っていた基本手当があっても、それ以上受け取ることができなくなってしまうリスクがあります。
②雇用契約期間の制限
失業保険をもらいながら働く上で、労働時間と同じくらい大切なのが、雇用契約期間の制限です。労働時間が週20時間未満であっても、雇用契約の内容によっては「就職した」とみなされてしまい、失業保険の給付が停止されるケースがあります。
ここでは、具体的にどのような契約期間が問題になるのか、そして、どのような点に注意して仕事を選べばよいのかを詳しく解説します。うっかり契約違反をしてしまわないよう、契約内容をしっかり確認することが不可欠です。
31日以上の契約が就職とみなされる理由
ハローワークでは、労働者が「31日以上の雇用見込みがある」と判断されるような契約を結んだ場合、それを「就職」とみなします。これは、その契約が安定的かつ継続的な雇用関係の始まりであると判断されるためです。その時点で失業状態が終了したと扱われ、失業保険の受給資格が失われることになります。
たとえ週の労働時間が20時間未満であっても、雇用期間が31日以上と定められている、または「更新の可能性あり」として実質的に長期雇用が前提となっている場合は、このルールに該当する可能性が高いです。
ルールを知らずに安易に31日以上の契約を結んでしまうと、予期せぬ形で失業保険の給付が停止されてしまうリスクがあります。特に、短期のアルバイトやパートを探す際には、雇用契約期間がどのように明記されているかを慎重に確認することが大切です。
短期契約で働く際の注意点
失業保険を受給しながら働く場合は短期の仕事を選ぶことが重要ですが、その際に注意すべきことは「雇用契約の更新の可能性」です。たとえ最初の契約期間が30日以内であっても、「契約更新の可能性あり」と明記されている場合、ハローワークから実質的な長期雇用とみなされるリスクがあります。
特に注意が必要なのは、契約書に「契約更新の可能性あり」「原則更新」といった文言が含まれているケースです。短期のつもりで働いていても、ハローワークの判断によっては就職とみなされ、失業保険の受給資格を失う可能性があります。そのため、できる限り「契約更新なし」や「今回限り」など、明確に契約期間が終了する旨が示されている仕事を選ぶのが賢明です。
雇用契約内容の確認方法
失業保険をもらいながら仕事をする際に雇用契約書で必ず確認すべき項目は「雇用期間」と「契約更新の有無」です。まず「雇用期間」の項目をチェックし、契約が30日以内、または単発の仕事であるかを確認しましょう。次に「契約更新の有無」の項目を見て、「更新なし」「原則更新なし」など、契約が自動的に更新されない旨が明記されているかを確認してください。
➂収入制限と計算方法
失業保険をもらいながら働く際の重要なルール3つ目は「収入の制限」です。
これまでの労働時間や雇用契約期間の条件について解説しましたが、これらの条件を満たしていたとしても、アルバイトや派遣などで得られる1日の収入額によっては、失業保険の基本手当が減額されたり、その日の給付が停止されたりする場合があります。
この収入制限のルールは、失業保険と労働で得た収入の合計が、離職前の給与水準を大幅に超えないように調整するために設けられています。ハローワークは失業手当の受給中に収入を得ることを全面的に禁止しているわけではありませんが、過度な収入があった場合に給付を調整することで、真に生活の安定を必要とする方に手当が届くように配慮しているのです。
失業保険と収入の合計が前職の日給の8割以下に抑える必要性
具体的な収入制限の基準は、「1日の収入(控除額を差し引いた額)と基本手当日額の合計が、離職時の賃金日額の80%を超えてはならない」というものです。もし、この80%の基準を超えてしまうと、超えた金額の分だけ基本手当から減額される仕組みになっています。ご自身の離職時賃金日額は、雇用保険受給資格者証に記載されています。
収入の計算例:アルバイト代と基本手当日額の関係
実際に収入の計算例を見てみましょう。例えば、ご自身の基本手当日額が5,000円で、離職時の賃金日額が8,000円だったと仮定します。この場合、離職時賃金日額の80%は6,400円になります。また、計算に用いられる控除額が約1,300円だとして、アルバイトや派遣などの労働をしたと考えてみます。
仮に、1日に2,000円の収入を得たとします。この2,000円から控除額1,300円を差し引くと、実際に計算に用いられる収入は700円となります。この700円と基本手当日額5,000円を合計すると5,700円です。これは、離職時賃金日額の80%である6,400円を下回るため、この日の基本手当は満額の5,000円が支給されます。
一方で、もし1日の収入が5,000円だった場合はどうでしょうか。5,000円から控除額1,300円を引くと3,700円です。これに基本手当日額5,000円を足すと合計は8,700円となり、基準額の6,400円を大きく超えてしまいます。この場合、超えた2,300円(8,700円 - 6,400円)が基本手当から減額されることになり、この日の基本手当は5,000円から2,300円引かれた2,700円の支給となります。
控除額の確認と申告の重要性
前述の収入計算例で出てきた「控除額」は、失業保険の給付額とアルバイト収入の調整において重要な役割を果たします。控除額はその時々の経済状況や制度改定によって変動する可能性がありますので、自身に適用される最新の控除額について、必ず管轄のハローワークで確認するようにしてください。
また、アルバイトや派遣などで収入を得た場合、1円単位まで正確にハローワークへ申告することが非常に大切です。これは不正受給を避ける上で最も基本的なルールになります。給与明細など働いたことを証明できる書類は保管し、失業認定申告書に記入する際に誤りがないよう、いつでも確認できるようにしておきましょう。
失業保険をもらいながら働く際の注意点

ここまで、失業保険をもらいながら働く際に特に重要な「労働時間」「雇用契約期間」「収入」の3つの基本ルールについて説明しました。ここからは、この基本ルールに加えて知っておくべき「注意点」を解説していきます。
ハローワークへの正確な申告
失業保険をもらいながら働く際に、最も重要となるのがハローワークへの正確な申告です。働いた日や時間、そして収入のすべてを失業認定申告書に正直に記入する義務があり、失業保険制度を適切に利用するために欠かせないものです。
労働実態を隠さないことの重要性
なぜ労働実態を隠さずに申告することが重要なのでしょうか。それは、「バレないだろう」という安易な考えが、後になって大きな問題を引き起こす可能性があるためです。雇用保険の加入記録や、企業側がハローワークに提出する書類などから、申告していない労働が発覚するケースは少なくありません。
もし申告していない労働が発覚した場合、それが意図的でなくても不正受給とみなされる可能性があります。正直に申告すれば、ルールに則って失業保険の減額や支給日の先送りが行われるだけで、厳しい罰則の対象になることはありません。誠実に申告することが、ご自身を守るための唯一の方法だと言えるでしょう。
申告漏れが不正受給につながるリスク
失業保険の不正受給とは、偽りの申告をしたり、故意に事実を隠したりして失業保険を受け取る行為を指します。これには、働いた事実や収入を申告しなかったり、虚偽の求職活動実績を報告したりするケースが含まれます。
悪質なケースでは詐欺罪として刑事告発される可能性もゼロではありません。たとえ意図的でなかったとしても、申告漏れは不正受給につながる可能性があるため、細心の注意を払う必要があります。一時的な収入のために、将来にわたる信用や金銭的な負担を負うことになってしまっては、元も子もありません。
ハローワークでの申告方法と必要書類
ハローワークでの申告は、主に失業認定日に提出する「失業認定申告書」で行います。この申告書には、指定された期間中に働いた日、労働時間、そして収入額を正確に記入する欄があります。もし働いた日があった場合は、その詳細を漏れなく記載してください。
申告の際に、働いたことを証明する給与明細などの書類の提出を求められる場合があります。アルバイトや派遣で収入を得たら、必ず保管しておくようにしましょう。申告書の書き方や、ご自身の状況について少しでも不安な点があれば、認定日の担当者に正直に質問することが大切です。
待機期間中のルール
失業保険の申請を終えればすぐに給付が始まるわけではなく、「待機期間」が設けられています。この期間は、通常の失業保険のルールとは異なる決まりがあるため、注意が必要です。
待機期間中の7日間は就労不可
失業保険を申請してから、通常は通算して7日間の「待機期間」があります。この7日間は、どんなに短時間のアルバイトや派遣であっても、一切の就労が認められていません。
もしこの期間中に働いてしまうと、待機期間が延長されたり、給付開始が遅れたりするペナルティが課される可能性があります。ごく短時間の単発バイトや、お手伝いのつもりでの軽い労働であっても就労とみなされるため、厳重に注意しましょう。
待機期間終了後の働き方の計画
待機期間が明けたら、これまで説明した失業保険のルールを守りながら、計画的に働き始めることができます。待機期間中に仕事を探したり、面接を受けたりすることは問題ありませんので、この期間を利用して、実際に働き始める日を待機期間が明けた後に設定するようにしましょう。
事前に仕事を決めておくことで、待機期間終了後すぐに収入を得られるため、スムーズな生活移行ができます。
待機期間中にやるべきこと
就労ができない待機期間は、再就職に向けた準備期間として有効活用することをおすすめします。まずは今後の求職活動計画を具体的に立ててみましょう。履歴書や職務経歴書をブラッシュアップする時間にあてるのも良いでしょう。
また、失業保険のルールや今回の記事で解説した注意点を改めて確認し、不明な点があればハローワークに相談してみるのも良い機会です。どのような短期の仕事がご自身に合っているか、情報収集に時間を費やすのも有意義です。
求職活動実績の維持
失業保険をもらいながら働く場合も、ハローワークから求められる「求職活動実績」を作り続ける必要があります。アルバイトはあくまで失業中の経済的なサポートであり、再就職に向けた一時的な活動とみなされます。そのため、労働を開始した後も、本職への復帰に向けた意欲と行動を示し続けることが失業保険を受給し続ける重要な条件となります。
求職活動実績が不足すると、その期間の失業保険が支給されなくなってしまうため、計画的に活動を行うことが大切です。
失業認定日までに必要な求職活動回数
失業認定日に失業保険の給付を受けるためには、原則として前回の認定日から今回の認定日までの期間に2回以上の求職活動実績が必要になります。ただし、自己都合退職などで給付制限期間がある場合は、初回の認定日までに3回以上の求職活動実績が求められます。
必要な回数を満たせない場合、その期間の失業保険は給付されません。アルバイト等で忙しくても、再就職に向けた活動は怠らないように注意が必要です。
求職活動実績を効率的に作るコツ
求職活動実績として認められる活動は多岐にわたります。企業の求人に応募することはもちろん、ハローワークで職業相談をしたり、許可されたセミナーに参加したりすることも実績として認められます。最近では、オンラインでの求人応募や転職サイトでの求職活動も実績として認められるケースが多くなっています。
アルバイト探しと並行して、本命の再就職先への応募活動も計画的に進めることが効率的です。例えば、週末に集中して応募活動を行う、週に一度はハローワークで相談するなど、ルーティンを決めて取り組むとよいでしょう。また、興味のある業界の企業説明会や交流イベントに参加することも、情報収集と実績作りを兼ねることができ、おすすめです。
失業保険をもらいながら働けるおすすめの仕事

これまで失業保険を受給しながら働くためのルールや注意点について詳しく見てきました。ここからは、それらの知識を踏まえて、「実際にどのような仕事を選べば良いのか」という具体的な疑問に答えます。単に収入を得るだけでなく、再就職へのステップとしても役立つような、賢い仕事選びのヒントをご紹介します。
週20時間以内の仕事の選び方
失業保険を受給しながら働く上で最も重要な条件は、「週の労働時間を20時間未満に抑える」ことです。この制約の中で、ご自身の状況や今後のキャリアプランに合った仕事を見つけるためには、いくつかのポイントがあります。
まず、シフトの融通が利きやすい仕事を選ぶことが大切です。急なハローワークへの出頭や、求職活動のための時間を確保できるよう、ご自身の都合に合わせて調整しやすい職場を選びましょう。また、季節によって業務量に変動がある仕事や、プロジェクト単位で募集される単発・短期の仕事も、週20時間未満の条件を満たしやすい傾向にあります。
さらに、雇用契約期間が明確に定められている仕事を選ぶことも重要です。特に「31日以上の雇用見込みがない」契約内容であることを確認し、意図せず長期雇用とみなされてしまわないよう注意しましょう。これにより、失業保険の受給資格を維持しながら、安心して働くことができます。
短時間労働に適した職種の例
労働時間が週20時間未満の仕事としては、データ入力や軽作業、仕分け作業など単発派遣の仕事がおすすめです。働く日時を選びやすく、契約期間も明確なため、失業保険受給中の働き方として非常に適しています。
イベントスタッフも期間限定で働くことができ、短期間で集中して収入を得やすいでしょう。飲食店やコンビニエンスストアの短時間シフトのアルバイトも、比較的多くの募集があり、未経験でも始めやすい点が魅力です。
最近では、フードデリバリーサービスの配達員など、ご自身の都合に合わせて自由に働く時間を決められるギグワークも人気です。これらの仕事は、雇用契約を結ばない「業務委託」の形式が多いため、雇用保険の適用外となり、失業保険の受給に影響を与えにくいという特徴もあります。
ただし、収入はすべて正確にハローワークへ申告する必要がありますので、注意してください。
再就職に役立つスキルを磨ける仕事
失業保険受給中の仕事は、単に生活費を補うためだけでなく、ご自身のスキルを維持・向上させ、次のキャリアに繋げる貴重な機会でもあります。
もしこれまでの職務経験を活かしたいとお考えであれば、専門スキルを要する短期の業務委託案件や、プロジェクトベースの仕事を探してみるのも良いでしょう。例えば、Webライティング、デザイン、プログラミング、経理事務など、ご自身の専門分野に関連する短期業務であれば、ブランクを作らずにスキルを維持し、実績を積み重ねることができます。
また、将来的に新しい分野へ挑戦したいと考えている場合は、未経験者歓迎の短期アルバイトをすると、業界や職種の雰囲気を知る良い機会にもなります。例えば、IT業界に興味があるならヘルプデスクの短期アルバイト、サービス業に転職を考えているなら販売補助やコールセンターなど、まずは入り口となる仕事で経験を積んでみるのも有効です。
このように戦略的な視点を持って仕事を選ぶことで、失業期間をキャリアアップの準備期間として有効活用できます。
失業保険受給中におすすめの派遣やアルバイト
失業保険受給中の働き方としてよく検討されるのが「派遣」と「アルバイト」です。それぞれにメリットがあり、ご自身の状況に合わせて選ぶことができます。
派遣の仕事は、契約期間や業務内容が明確に定められている案件が多く、週20時間未満の短時間や短期間の求人も豊富にあります。派遣会社が間に入るため、雇用契約に関する相談もしやすく、不明点を確認しやすいという利点があります。特に、スキルアップを目指したい方にとっては、特定の専門業務に集中できる派遣の仕事は魅力的な選択肢となるでしょう。
一方でアルバイトは、自宅や生活圏の近くで手軽に始められる点が大きなメリットです。飲食店や小売店、オフィスでの補助業務など、多種多様な求人があります。シフトの柔軟性も比較的高いことが多いため、ご自身の求職活動や生活リズムに合わせて働きやすいと言えます。ただし、雇用契約期間や労働時間が失業保険の受給条件に合致しているかを、ご自身でしっかり確認することが重要です。
失業保険をもらいながら働く際に知っておきたいポイント

再就職手当の活用
失業保険をもらいながら働くことは、生活費の補填や社会とのつながりを保つ上で非常に有効な手段です。しかし、いつかは安定した職に就きたい、本格的にキャリアを再スタートさせたいと考えている方も多いでしょう。そうした方にとって、ぜひ知っておいていただきたいのが「再就職手当」という制度です。
再就職手当の申請条件とメリット
再就職手当は、失業保険の給付期間を多く残した状態で早期に安定した職業に就職した場合に、その残りの給付日数に応じて支給される一時金のことです。これは、失業保険の基本手当とは別に支給されるもので、早期の再就職を促進するためのインセンティブとして設けられています。
再就職手当の支給を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。主な条件は、ハローワークで紹介された職業に就職したか、ハローワークに提出した求職活動の結果として再就職したか、そして失業保険の給付日数が3分の1以上残っているか、などが挙げられます。また、再就職先で1年を超えて勤務することが確実であると認められる必要があります。
この制度の大きなメリットは、早期に安定した職場に復帰することで、まとまった金額の一時金を受け取れる点です。給付日数の残りが多ければ多いほど、支給される金額も高くなるため、早期の再就職への強いモチベーションにつながります。例えば、基本手当の支給日数が90日残っている状態で再就職した場合、その給付残日数の50%から70%に相当する金額が一括で支給されます。これにより、新しい職場で必要な準備費用や当面の生活費に充てることができ、経済的な不安を軽減しながらスムーズなスタートを切ることができます。
再就職手当を受けるための手続き
再就職手当を受け取るための手続きは、大まかに以下の流れで進みます。
まず再就職先から内定をもらった段階で、速やかに管轄のハローワークへ報告することが重要です。この際、ハローワークから「再就職手当支給申請書」を受け取ります。次に、この申請書に就職先の企業に必要事項を記入してもらい、証明欄に捺印してもらいます。そして、入社後に申請書と添付書類(採用証明書など)をハローワークに提出することで申請が完了します。
提出後、ハローワークでの審査を経て、支給が決定されれば指定の口座に手当が振り込まれます。手続きの詳細や必要書類は個々の状況や年度によって異なる場合があるため、必ずハローワークの担当者に直接確認し、不明な点はその都度質問するようにしてください。
再就職手当を活用したスムーズな職場復帰
再就職手当は、単に金銭的なメリットだけでなく、心理的な側面でも大きな役割を果たします。失業保険を受給している期間は、どうしても将来への不安や焦りを感じやすいものです。しかし、再就職手当という目標を設定することで、単なる生活費の補填というだけでなく、新しいキャリアのスタートを後押ししてくれる「お祝い金」として捉えることができるようになります。
この手当を意識して早期の再就職を目指すと、求職活動に対するモチベーションを高め、より積極的に仕事を探すきっかけとなるでしょう。結果として失業期間の短縮にもつながり、経済的な安定だけでなく、社会とのつながりや自己肯定感を取り戻すことにも役立ちます。再就職手当を賢く活用し、前向きな気持ちでスムーズな職場復帰を実現してください。
不正受給を防ぐためのポイント
失業保険を受給しながら働く上で、最も重要かつ絶対に避けるべきなのが「不正受給」です。これまで繰り返しお伝えしてきたように、失業保険の制度は複雑で、ご自身の状況に合わせて正しい理解と申告が求められます。
「すべての労働を申告する」「不明点は必ずハローワークに質問する」「安易な自己判断をしない」という鉄則を心に留めておくことが、安心して失業保険の恩恵を受けるための鍵となります。
不正受給の罰則内容とリスク
もし不正受給が発覚した場合、非常に重い罰則が科せられます。まず、支給された失業保険の全額を返還しなければなりません。さらに、その不正に受給した金額の最大2倍にあたる金額の納付が命じられ、結果として受け取った額の合計で3倍の金額を返還することになります。
また、不正受給が悪質と判断された場合には、詐欺罪として刑事告発される可能性もあります。安易な気持ちで申告をごまかしたり、隠したりすることは、取り返しのつかない事態を招くリスクがあることを強く認識してください。たとえ意図的でなかったとしても、申告漏れは不正受給とみなされる可能性があるため、細心の注意が必要です。
受給期間を超えて失業手当を満額もらえなくなる可能性
もう一つ注意したいのが「受給期間の満了」に関する問題です。失業保険の基本手当には、原則として離職日の翌日から1年間という「受給期間」が定められています。
もし1日の労働時間が4時間以上となり、その日の給付が「先送り」される日が続くと、本来もらえるはずの給付がどんどん後ろにずれ込んでいきます。先送りが重なり、受給期間の最終日を迎えても所定給付日数のすべてを受け取りきれない場合、残りの給付は消滅し、満額を受け取ることができません。
ハローワークや専門家への相談の重要性
失業保険の制度は複雑で、個々の状況によって適用されるルールや判断が異なる場合があります。そのため、少しでも疑問や不安な点があれば、決して自己判断で行動せず、必ず管轄のハローワークに相談することが最も重要です。
ハローワークの担当者は制度の専門家であり、皆さんの状況に合わせた正確な情報を提供してくれます。電話や窓口での相談はもちろん、失業認定日に直接質問することも可能です。正直に状況を話し、不明な点をクリアにすることで、誤解や申告漏れを防ぎ、安心して失業保険を受給し続けることができます。
失業保険をもらいながら働く際によくある質問

まとめ
ここまで、失業保険を受給しながら働くためのさまざまなルールや注意点について詳しくお伝えしました。失業保険をもらいながら働くことは、単に経済的な助けになるだけでなく、社会とのつながりを保ち、再就職への円滑なステップになる有益な活動です。この期間を有効活用し、ご自身の目標達成につなげてください。

