派遣社員として働いていると、「残業を頼まれたけど断っていいの?」「残業代はちゃんと出るの?」「そもそも何時間まで働けるの?」といった疑問を感じる場面があるかもしれません。この記事では、派遣社員の残業に関する基本的なルールから、残業代の計算方法、上手な断り方、トラブル時の相談先まで、派遣社員が知っておくべき情報をわかりやすく解説します。
そもそも派遣社員は残業しないといけないの?
派遣社員の残業の有無は、契約内容によって異なります。「そもそも残業をしなければいけないのか」と疑問に思ったら、まずは自分の契約を確認することが出発点になります。
まずは雇用契約書を確認しよう
派遣社員の残業は、派遣会社との間で締結する雇用契約書(就業条件明示書) に記載されています。この書類には、1日の所定労働時間・残業の有無・残業が発生する場合の条件などが明記されており、残業の義務があるかどうかはここで確認できます。
契約書に「時間外労働なし」と記載されている場合、原則として残業を求められても断ることができます。「時間外労働あり」と記載されている場合は、一定の残業に応じる義務が生じます。ただこの場合も、法律で定められた残業時間の上限や、後述する36協定の範囲内であることが前提です。
確認すべき主なポイントは以下のとおりです。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 所定労働時間 | 1日、1週間の勤務時間 |
| 時間外労働の有無 | 残業が発生する可能性があるかどうか |
| 時間外労働の上限 | 月何時間まで残業が想定されているか |
残業の指示ができるのは誰?
派遣社員の残業で混乱しやすい要素として、「派遣会社」と雇用契約を結びながら「派遣先」の指揮命令のもとで働くという構造があります。
残業の依頼を含む日常の業務指示は派遣先の担当者が行います。しかし残業時間の上限管理や残業代の支払いなど、労働条件に関する責任は派遣会社が負っています。つまり残業を指示するのは派遣先ですが、その残業が適法かどうかを管理する責任は派遣会社にあります。
この場合、派遣先が派遣会社と事前に残業に関する取り決めをしているか、または派遣会社の許可を得ていることが前提となります。派遣先の都合だけで一方的に残業を指示することはできません。
派遣先から残業を依頼された場合、ご自身の雇用契約の内容と照らし合わせ、疑問があればまずは派遣会社の担当者に確認することが重要です。
派遣社員の平均残業時間はどれくらい?
各種調査機関が発表しているデータによると、派遣社員の月の平均残業時間は概ね「5時間から15時間程度」とされており、正社員と比較して少ない傾向にあります。この平均値と比較してご自身の残業時間が大幅に多いと感じる場合は、業務量や人員配置に問題がある可能性もあり、何らかのアクションを検討する良いきっかけになるかもしれません。
ただし、残業時間は職種や繁忙期によっても大きく異なります。事務系職種では残業が少ない傾向がある一方、製造・物流・ITエンジニア系では繁忙期に残業が集中するケースもあります。採用時に繁忙期の有無や残業時間の実態などを確認しておくとよいでしょう。
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派遣社員の残業ルール|45時間と36協定

ここからは、残業の上限時間に関するルールと、その根拠となる「36協定」について説明していきます。
残業時間の上限は月45時間・年360時間が原則
労働基準法では、法定労働時間は1日8時間・週40時間と定められており、これを超える労働(時間外労働)には上限が設けられています。これはすべての労働者に適用される重要なルールです。
月の上限(原則):45時間
年の上限(原則):360時間
もしもこの上限を超える残業を求められた時は、「特別条項付き36協定」が締結されていない限り、違法となります。
36(サブロク)協定は派遣会社と結ばれる
36協定とは、労働基準法第36条に基づく「時間外・休日労働に関する協定」のことです。使用者(雇用主)と労働者の過半数代表が締結し、労働基準監督署に届け出ることで、法定労働時間を超えた残業や法定休日の労働が可能になります。派遣社員の場合、雇用契約を結んでいるのは派遣会社であり、36協定も派遣会社と派遣社員の間で締結されます。
この協定がなければ、原則として企業は従業員に残業をさせることはできません。したがって、雇用契約書に「残業あり」と記載されている場合、それは雇用主である派遣会社が、労働者の代表者と適法な36協定を締結し、労働基準監督署に届け出ていることを前提としています。
「月45時間超」も可能?特別条項付き36協定とは
通常の36協定では、残業時間は原則月45時間・年360時間が上限ですが、「特別条項付き36協定」を締結することで、この上限を超えた残業が認められます。特別条項は、「通常予見できない業務量が一時的に大幅に増加した場合」など、臨時的かつ特別な事情がある場合に限って、労使の合意のもとで上記の上限時間を延長できるというものです。
ただし、特別条項付き36協定の場合でも、以下の上限が定められています。
- 時間外労働(年間):720時間以内
- 時間外労働+休日労働(月):100時間未満
- 時間外労働が月45時間を超えられる数:年6回まで
- 時間外労働+休日労働の複数月(2~6か月)平均:80時間以内
この上限は、労働者の健康を確保するための重要なラインであり、いかなる理由があっても超えることができない絶対的上限です。超えた場合は法律違反となります。
違反した場合の罰則
例えば残業時間の上限規制に違反したり、36協定を締結せずに残業をさせたりした場合、雇用主である派遣会社に対して「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される可能性があります。
罰則の対象は派遣会社ですが、派遣先が違法な残業を強いた場合も、派遣先に対して行政指導が行われることがあります。「残業が上限を超えている」と感じた場合は、まず派遣会社に相談し、改善されない場合は公的機関への相談も検討しましょう。
派遣の残業代|誰が払う?どう計算する?

残業代の支払い義務が誰にあるのか、また実際にどのように計算されるのかは、派遣社員にとって特に気になるポイントのひとつです。仕組みを正しく理解しておくことで、未払いや計算ミスにも気づきやすくなります。
残業代を支払うのは派遣会社
派遣社員の残業代を支払う義務があるのは、派遣会社です。派遣先企業ではありません。派遣社員は派遣先の指揮命令のもとで働きますが、雇用契約を結んでいるのはあくまで派遣会社なので給与・残業代・各種手当などの賃金はすべて派遣会社から支払われます。
派遣先が残業を指示した場合、その残業時間の情報は派遣先から派遣会社へ報告され、派遣会社が残業代を計算・支給する流れになります。「残業したのに残業代が出ない」「金額がおかしい」と感じた場合は、派遣先ではなく派遣会社の担当者に確認・相談しましょう。
残業代の計算方法|割り増し賃金・時給換算
残業代は、通常の時給に割増率を掛けた「割増賃金」が適用されます。割増率は残業の種類によって異なります。
「法定労働時間」と「所定労働時間」の違い
残業代の計算において、まず押さえておきたいのが「法定労働時間」と「所定労働時間」の違いです。
| 法定労働時間 | 労働基準法で定められた上限時間 | 1日8時間・週40時間 |
| 所定労働時間 | 雇用契約で定めた実際の勤務時間 | 1日7時間・週35時間など |
法定労働時間を超えて労働した場合に、企業は労働者に対し割増賃金を支払う義務が発生します。
所定労働時間が法定労働時間より短い場合(例:1日7時間契約)、7時間以上8時間未満の残業は、所定労働時間を超えていますが、法定労働時間(8時間)以内であるため、「法定内残業」となり、割増賃金の対象外になることがあります。
8時間を超えた部分から「法定外残業」として25%増の割増賃金が発生します。自分の契約上の所定労働時間を確認しておくことが重要です。
時間外労働・深夜労働・休日労働の割増率一覧
残業代の割増率は、以下のとおりです。給与明細を受け取ったら、残業時間数と割増率をもとに自分で計算してみることをおすすめします。
| 残業の種類 | 割増率 | 計算式(時給1200円の場合) |
|---|---|---|
| 法定時間外労働(月60時間以内) | 25%増 | 1200円×1.25=1500円 |
| 法定時間外労働(月60時間超) | 50%増 | 1200円×1.50=1800円 |
| 深夜労働(22時〜翌5時) | 25%増 | 1200円×1.25=1500円 |
| 法定時間外+深夜労働 | 50%増 | 1200円×1.50=1800円 |
| 法定休日労働 | 35%増 | 1200円×1.35=1620円 |
| 法定休日+深夜労働 | 60%増 | 1200円×1.60=1920円 |
対象者が最も多いであろう法定外残業は、月60時間以内なら25%増、60時間を超えると50%増になります。
【注意】15分単位など端数切り捨ては違法の可能性
「残業時間が15分単位で切り捨てられている」という話を耳にすることがありますが、これは原則として違法です。労働基準法では、労働時間は1分単位で計算することが原則とされています。ただし、例外として1か月の残業時間の合計に生じた30分未満の端数を切り捨てることは、行政通達により認められています。
「いつも15分切り捨てられている」「残業したのに記録されていない」といった状況に心当たりがある場合は、タイムカードや勤怠記録を手元に保存したうえで、派遣会社に確認してみてください。
残業を断りたい!上手な断り方と注意点

「残業を断ったら契約更新に影響するのでは」と不安を感じる方も多いかもしれませんが、状況によっては残業を断ることは正当な権利です。断れるケースと断れないケースを整理したうえで、角が立たない断り方のポイントを解説します。
残業を断れるケース・断れないケース
断れるケース
以下のいずれかに該当する場合、残業を断ることができます。
- 雇用契約書に「時間外労働なし」と記載されている場合
契約に定めのない残業を強制することは、労働契約法上認められません。契約書を根拠に断ることができます。 - 36協定が締結されていない場合
36協定が存在しない職場では、法定労働時間を超えた残業を命じることは違法です。 - 36協定の上限時間をすでに超えている場合
月45時間・年360時間(特別条項がある場合はその上限)を超えた残業は、協定の範囲外となるため断ることができます。 - 育児・介護などの法定免除事由がある場合
育児介護休業法により、小学校就学前の子を養育している場合や要介護状態の家族を介護している場合は、時間外労働の免除を申し出ることができます。
断れないケース
一方、以下の場合は原則として残業に応じる義務が生じます。
- 雇用契約書に「時間外労働あり」と記載されており、かつ36協定が締結されている場合
この場合、会社の業務上の必要性があれば、合理的な範囲で残業命令に従う義務があります。ただし、上限時間の範囲内に限ります。 - 業務上の突発的なトラブル対応や、災害発生時など、残業に合理的な必要性が認められる緊急事態の場合
このような状況では、安全配慮義務の観点からも協力を求められることがあります。
ただし、これらのケースであっても、恒常的に長時間労働が続いている場合は問題です。状況によっては、派遣会社を通じて業務量の調整や人員の増強などを交渉できる可能性もあります。
【例文あり】状況別の断り方のポイント
残業を断る際は、一方的に拒絶するのではなく、「謝罪の言葉」「簡潔な理由」をセットで伝えることです。これにより、相手への配慮を示し、角を立てずにスムーズなコミュニケーションを図ることができます。
体調不良や家庭の事情がある場合
やむを得ない個人的な事情がある場合は、正直に伝えることが基本です。ただし、詳細を話す義務はありません。
本日は体調がすぐれないため、申し訳ありませんが定時で上がらせていただいてもよいでしょうか。明日以降でできることがあれば対応いたします。
本日は子どもの迎えがあり、定時退社が必要です。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
事前にわかっている場合は、当日ではなく前日までに伝えると、職場への配慮が伝わりやすくなります。
契約内容に反している場合
契約書に「時間外労働なし」と記載されているにもかかわらず残業を求められた場合は、契約内容を根拠に断ることができます。
私の契約では時間外労働の定めがないため、本日は定時で退社させていただきます。もし今後残業が必要な場合は、派遣会社を通じて契約内容を確認させていただけますでしょうか。
感情的にならず、契約という客観的な根拠を示すことで、相手も受け入れやすくなります。繰り返し残業を求められる場合は、派遣会社の担当者に状況を共有しておくことをおすすめします。
普段からできる!残業を減らすための工夫
残業を断ることも大切ですが、そもそも残業が発生しにくい働き方を意識することも重要です。以下のような工夫を日常的に取り入れてみましょう。
- 業務の優先順位を明確にする:
1日の始めにタスクを整理し、重要度・緊急度の高いものから取り組む - 業務量が多い場合は早めに上司・担当者に相談する:
「今日中に終わらない可能性がある」と事前に伝えることで、業務の再配分や期限調整につながりやすい - 定時退社の意思を日頃から示す:
「今日は定時で上がります」と朝のうちに伝えておくことで、残業依頼を受けにくくなる - 派遣会社の担当者に状況を共有する:
慢性的な残業が続く場合は、派遣会社に相談することで派遣先への働きかけが期待できる
残業を減らすことは、自分の健康やプライベートを守るだけでなく、長期的に安定して働き続けるためにも重要です。
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こんな時はどうする?派遣の残業トラブルQ&A
派遣社員の残業に関して、実際によく寄せられる疑問や困りごとをQ&A形式でまとめました。自分の状況に近いものを参考にしてみてください。
残業トラブルはどこに相談すればいい?

残業に関するトラブルは、一人で抱え込まずに適切な相談先に頼ることが解決への近道です。状況に応じて、以下のステップで相談先を検討してみましょう。
残業トラブルが発生した場合、最初の相談先は派遣会社の担当者です。派遣会社は派遣社員の雇用主として、労働条件の管理や派遣先との交渉を行う責任を持っています。
「残業が多すぎる」「残業代が正しく支払われていない」「残業を断りにくい雰囲気がある」といった状況を具体的に伝えることで、派遣先への働きかけや契約内容の見直しなど、適切なサポートを受けられる可能性があります。
担当者に相談する際は、日時・残業時間・状況を記録したメモを用意しておくと、話がスムーズに進みます。
派遣会社の担当者に相談しても問題が解決しない場合や、派遣会社自体に問題があると疑われる場合は、公的な相談窓口を活用することを検討しましょう。
労働基準監督署:残業代未払い・労働時間違反などの法令違反を申告できる
総合労働相談コーナー:労働問題全般について無料で相談できる窓口
労働条件相談ほっとライン:電話で匿名相談が可能
未払い残業代の請求など法的な解決が必要な場合は弁護士への相談も選択肢のひとつです。
残業代請求には時効があるため注意
残業代の請求権には3年の時効があります。時効を過ぎると、たとえ未払いがあっても請求できなくなってしまいます。「もしかして残業代が正しく支払われていないかも」と感じた場合は、早めに行動することが重要です。
まとめ|派遣社員の残業は正しい知識を身につけておこう
派遣社員として働いていると、残業に関する疑問や不安は尽きないものです。この記事を通して、自分の労働条件や法律上の権利について正しい知識を身につけることが、安心して働くための何よりも大切な一歩だとご理解いただけたのではないでしょうか。
派遣社員であっても、残業に関する権利は正社員と同様に法律で守られています。「なんとなく断りにくい」「残業代の計算が合っているかわからない」と感じている方は、まずは自分の契約書を確認し、疑問があれば派遣会社の担当者に相談することから始めてみましょう。
キャリアリンクでは、お仕事探しから就業中まで、担当者がしっかりとフォローします。また様々なお悩みを相談できる窓口も設置されているので安心です。残業に関する相談はもちろん、より働きやすい職場環境をお探しの方は、ぜひキャリアリンクのキャリステでお仕事を探してみてください。
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